YOUはどうして林業に? 林業従事者のリアルな声、聞いてみました
実際に山で働いている人はどんなことを考えているのだろう。働いてみての率直な感想や魅力、課題は何なのか。そんな疑問を、和歌山に移り住み民間の林業ベンチャー・株式会社中川に勤める繁野秀樹さんにそのままぶつけてみました。
————どうして林業に就き、また移住先に和歌山を選んだのかを聞かせてください。
繁野さん:
以前から林業に興味があったんです。興味は持ちながらも異業種の仕事をしていたので、年齢を重ねるにつれこのままでいいんだろうかと思い始めて…、やるなら今しかないなと、林業の就業支援講習の情報を見つけて、まずは1日体験から受講。休みの日に林業の現場を見学させてもらって、その後4日間講習というのに参加して、現場にも行って…とするうちにより実感できるようになって、本格的に転職と移住を考え始めたんです。その中で、龍神村に移住者の住宅があることや和歌山県に農林大学校が開校した情報を知り、和歌山に来ることを決めました。
――――いまの職場をどう選びましたか?
繁野さん:
林業の就業試験講習に参加していた時に講師として中川さんにお会いしたのを機に、入学前から株式会社中川で林業のアルバイトを始めたんです。中川さんの林業の働き方や環境をよくしたいという強い想いに感銘を受けたというのもあります。学校に通いながらもそのままバイトを続け、結果的に卒業してからもお世話になることにしました。社長の人柄や班の雰囲気も決め手の1つでした。今は非常にいい環境で働けているなと思っています。
――――林業のモチベーションややりがいはどこに感じますか?
繁野さん:
いまの会社を選んだ目的が造林。植え込みがメインで、木を切った後に苗を植える仕事なんですが、要するに山を育てる最初の仕事。その仕事に就けるというのが今のやりがいです。1つ1つの作業はきついんですが、休憩の時にふと顔をあげると山の稜線が見えたり、場所によっては海が見えたり…そんなきれいな景色を見るたびホッとしています。またそんな光景を眺めながら食べる弁当は最高においしいです。自然に囲まれて仕事ができることに幸せを感じています。
――――いまお住まいの地域や和歌山の魅力はなんでしょうか。
繁野さん:
和歌山の魅力は自然が豊かなところですね。わたしの出身の千葉県八千代市はあまり山のないところなんです。2年前に田辺市龍神村に移住してきたんですが、山村地区に住むのは初めて。最初は住民となかなか関われなかったけれど、お祭りに参加するようになったりいろんな話をしたり少しずつ交流を重ねて、今ではすごくいい環境になりつつあります。龍神は山がメインですが、和歌山は南に行くと白浜をはじめ綺麗な海岸もあるし、山、川、海と自然のバランスがとてもいいと思います。
――――いまの林業の課題はなんだと思いますか?
繁野さん:
作業員の年齢ですね。いま38歳なんですが、職場でわたしが一番若いんです。苗を植えた後、50年、60年管理していかないといけないわけなので、そうなると若い世代の方が働いてもらえないと辛い。常に体を張っていて、危険も伴う仕事。そのことを考えた時にも、林業全体でもっと給与面もよくなっていってほしいですね。結局はどこにやりがいを感じるか。わたしのように山村地区の地域の生活に魅力を感じるというのも1つの選択肢。まず一度働いている現場を見るなり体験してもらえると違うと思います。
――――これから林業に従事したい人へのメッセージをお願いします。
繁野さん:
わたしが林業に就く前に不安に思っていた仕事の体力や技術面は、実際に働いてみるとそんなに心配することはありませんでした。学校である程度の知識や技術は身につけられますし、そうじゃなくても働きながら資格を取って技術の向上もできます。そこは心配しなくても大丈夫。山村地域での生活も、ちょっと勇気を出して地域に関わってみたら非常に楽しくて有意義です。まずは自分の住みたいと思う地域に足を運んで雰囲気を感じること、そして少しでも林業の現場に足を運んでもらって時間のある時に見るなり体験して、いいなぁと思ったら進んでいっていい仕事だと思います。不安があったら相談できる場所もあるので、不安ごとを1つずつ解消していければいいと思います。