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林業従事者インタビュー 千井芳孝さん

林業従事者インタビュー 千井芳孝さん

千井芳孝さん

千井芳孝さん

大阪府出身。平成14年に夫婦で古座川町に移住し、「緑の雇用」第1期生として南紀森林組合で林業に就業。現在は、北海道大学和歌山研究林で森林技能職員として現場に出るかたわら、和歌山県農林大学校林業研修部の講師を務め、後輩の育成に力を注いでいる。

田舎暮らしに憧れて転職した林業が今は天職に

「緑の研修生」第1期生として大阪から和歌山に移住して林業を始め、現在は和歌山県農林大学校林業研修部の講師も務めている千井さんに、林業を始めた経緯や後輩に伝えていきたいことなどをお聞きしました。

最初はスギとヒノキの区別もつかなかった

学校を出てから大阪で冷暖房設備の会社に勤めていました。仕事はうまく行っていましたが、漠然とこのままでいいのかな?と思い始めたんです。そのときは「林業をやろう」というはっきりした目標はなく、何となく田舎暮らしがしたいなあ、釣りが好きだから川や海があるところに住みたいなあ、という曖昧な気持ちでした。

そんなときに新聞で「森林の仕事ガイダンス」が大阪で開かれることを知って参加しました。そこで、たまたま和歌山県のブースに入ったらトントン拍子で話が進んでしまい、「田舎暮らしをするために林業に就業した」というのが本当のところです。スギとヒノキの区別もつきませんでしたが、南紀森林組合で「緑の研修生」第1期生として林業を始めました。

夫婦は話し合いが大事

実は、当時は結婚したばかり。妻には正直に「田舎暮らしをしたい!」という夢を話しました。縁もゆかりもなく、知り合いもいない土地へ移住するのは、正直不安もあり悩みましたが、そうしたことも含め、包み隠さずに「何故田舎暮らしをしたいのか」ということを話しました。

週末の過ごし方であったり、仕事に対する気持ちであったり、「自分はこういう生き方がしたいんだ!」ということを話し共感してもらいました。

和歌山に移住して15年になりますが、もし一人だったら、続かなかったかもしれません。私の生き方を理解してくれ、応援してくれた妻には本当に感謝しています。

森林組合から大学研究林の技能職員へ

森林組合には12年間勤めました。造林、育林から間伐や主伐、架線集材や高性能林業機械による作業などひととおりの作業を経験させてもらいました。そこで、もっと広い視野で林業や森林について学びたいという思いが強くなり、たまたま北海道大学和歌山研究林の技能職員の募集があったので転職することにしました。

以前から「緑の雇用」のフォレストワーカー研修の講師をやらせてもらっていて、後輩を指導し育成することも和歌山の林業には必要なことだと感じていました。研究林の技技能職員の方が森林組合職員よりも多少自由度が高く、様々なことにチャレンジしやすいかなという想いもありました。

林業の面白さを伝えたい

林大の学生たちが卒業して実際に和歌山県内の林業事業体に就業した時に、絶対にケガをさせたくない、という強い想いがあります。ケガをするということは、自分自身を含め誰も得をしません。そのために私が十数年間、積み重ねてきた技術や知識を伝えていきたいと思っています。

特に学んでほしいのは安全対する考え方です。1本の木を伐り倒すにもいろいろな考え方があります。その中でいちばんリスクが少なく確実に倒せる作業方法を選択できるようになって欲しいと思っています。

木を伐り始める時から倒れるまで、常に自分のコントロール下におくことが大切です。それが身につくと達成感も大きくなりますし、仕事がずっと楽しくなります。林業の面白さを少しでも知ってほしいですね。

若い頃に望んでいた暮らしを手に入れた

私の場合、田舎暮らしをしたいというのが最初にあって、受動的に選んだのが林業でした。しかし、林業に携わっていくうちに、どんどん林業が面白くなりました。技術的なこと、知識的なこと、林業はとても奥深い仕事です。一般の人は、林業というとチェーンソーで木を伐る仕事と思われているかもしれませんが、実はやることが多岐に渡ります。

また、和歌山は山あり、川あり、海ありと豊かな自然に恵まれています。季節が移り変わるごとに表情を変える景色は、見ていて飽きることがありません。

私は釣りが趣味で、最近は海釣りもはじめました。私が住んでいる古座川は、紀伊半島の西海岸にも東海岸にもすぐ行けます。川を遡ればダム湖があります。釣りをする場所には事欠きません。

春には山菜、秋にはキノコと山の恵みも満喫できます。和歌山で林業を始めて自分が思い描いていた暮らしを手に入れることができました。