180度変化した仕事で地に足をつける
和歌山県新宮市は十津川と熊野川の河口にあります。豊臣秀吉が大阪築城をした際に熊野材を求めた頃から歴史が始まり、江戸時代から明治にかけては東京での建築ラッシュに向けて、熊野川を筏に組んで流されてた木材は、新宮からどんどん運ばれました。
そんな歴史を持つ新宮で、林業の職についた方がいます。前田商行株式会社の島田善律(よしのり)さんにお話をお聞きしました。
日本で最も大型機械化が進んでいる会社の一つ
高性能林業機械のハーベスター、木材を運搬するフォワーダ、自走式で架線集材できるタワーヤーダなど、林業でも大型機械化が進んでいます。
大型機械を操るには様々な資格が必要になるものの、確実に効率は上がり、労力も軽減できるとのこと。大変な投資ではありますが、前田商行株式会社では大型機械化に積極的に取り組んでおられます。
取材当時8年目だった島田さんは、「まだまだ先輩の領域に追いつけない」と言いながらも、大きな機械を鮮やかに操る姿を見せてくれました。
今までと180度異なる職種について
森林とは関わりの薄い街で生まれ育った島田さん。元々は音大を出て、中学校音楽教師をしていたという異例の経歴です。インドア派で休みはゲームをしているそう。
そんな島田さんが林業に興味をもったのは、林業で働くということが、これまでの生活と大きく異なったからかもしれません。自然の中で働くことに興味を持った島田さんは、林業就業支援講習を受け、その後林業に就職。東大阪市から移住してきました。
新宮には買い物する場所などがなんでも揃っているので、暮らしに不便は感じたことはないそうです。慣れるまでは筋肉痛と夏場の作業が辛かったとのこと。体ができていない頃は、怪我もしたそうです。幸い、大きな怪我ではありませんでしたが、気が緩むとケガにつながってしまいます。
そんな気が抜けない中の夏場の作業。木を伐っていくことでだんだんと日陰がなくなってしまいます。日陰が残るように考えながら伐っていくそう。
山主さんの持ち物である山で周りの木も全て商材。ペースを掴むまでは、毎日大変だったそうです。
数字を励みにして頑張る、チームワーク。
10年でようやく一人前、と言われる業界で、8年目。最初の1年は主に運搬を担当しましたが、慣れてきて切りはじめたらどんどんと仕事を任せられたそう。今では伐採、架線集材から植林までチームで全て行っているとのこと。
道を作る人、切り出しをする人、運搬をする人という形でそれぞれ役割を持って作業します。
林業というと自然の中の仕事で、体力勝負、というイメージがありますが、前田商行株式会社は収量などをはっきりとした数字にして、社員全員に共有。数字も頑張ろう!という励みにして、毎日の活動を頑張っているそうです。
島田さんにこれからの抱負をお聞きすると「安全に仕事して普通に生活していくこと」「地道に林業の道を進んでいくこと」と言います。地に足がついた言葉から、今の充実感と責任感を感じました。