光が入る綺麗な山を仲間と共に
「ゆっくり下ろしま〜す!いきま〜す!」
集材機の大きなエンジン音にも負けない大きな声が山の中に響きます。
声の主は、川崎翔太(かわさきしょうた)さん。屈託のない笑顔が印象的で、チームのムードメーカー的存在です。
川崎さんに、林業を始めたきっかけ、これから目指したいことについてお話を伺いました。
役割分担でスムーズに作業を進める
仕事として林業に携わりながら、さらなる技術の向上や細かな作業のコツなどを学べるフォレストワーカー制度。川崎さんは森林組合こうやに勤めながら、この制度を利用して研修を受けています。
ちょうど、集材機に木を乗せるところにおじゃましました。トラックが入ってこられる土場まで、切り倒した木を運び出します。
今の今までスッと天に伸びていた木は想像以上に重たいもの。到底人の力で動かすことはできません。チェーンソーで長さを揃え、ワイヤーを巻きつけ、少しずつ動かします。
機械を操作する人、ぶら下がった木の方向を定める人、木の重さで集材機が浮いてしまわないように押さえる人など、5人での共同作業です。誰の指示があるわけでもなく、自然とそれぞれの持ち場が決まり、総重量約1トンの木材が難なく集材機に収まりました。
新しい一歩を踏み出したい
川崎さんは、14年間パティシエとして働いていました。
お菓子作りから、山仕事への転職。きっかけは奈良県吉野郡野迫川村で見た山の風景でした。
「アウトドアが趣味で、キャンプしたり、登山に行ったり、その時の景色を写真に撮ることも好きだったんです。野迫川村の山に入った時、光が霧がかっていてめちゃめちゃ綺麗で、こんな山があるんだって感動したんです。光が入らない真っ暗な山もたくさんありますからね。
誰がこの山を管理してるんだろうってところに興味が湧いて、そこからいろんなことを調べ始めました。」
調べていくうちに山の仕事にどんどん興味が湧いてきて、林業ガイダンスなどに参加するようになったそうです。
「今後の人生、また何か1から始めるのも楽しそう。新しい技術を身につけてみたい。野迫川村で見たような、光が入る美しい山を作りたい」と、林業の世界に一歩を踏み出しました。
充実した研修内容が自分の糧に
「木を切る時には、周りの木との距離、木と木の間隔、木の重心など、考えなければならないことがたくさんあります。結果、思い通りのところにパンっと倒れた時は、本当にとても気持ちいいんです。
正直なところ、やり始めた頃は、道なき道を登って行かなければならないので体力的な問題をすごく感じました。今は全然苦にならないですけどね。」
フォレストワーカー制度では、山の作業だけではなく座学もあり、それぞれの作業について、いろんな方向からの技術を詳細に教えてもらえます。ワーカー同士での情報交換もできるそう。
研修にきて得たことはそのまま実際の仕事にも活かすことができ、自分の糧になっていると話してくれました。
ガイダンスや説明会への参加がおすすめ
これから林業に関わることを考えている方にアドバイスを聞いてみました。
「和歌山県はサポートが手厚いです。こんなはずじゃなかったってことにならないように、ガイダンスや説明会に参加して、ある程度調べてから始めるといいかもしれないですね。」
技術を向上させて、光が射す山を作りたい
「まだ始めたばかりなので、自分自身の技術を向上させるのが今現在の目標です。どんどん学んでいって、安全に木を切り、造材し、いい材を出せるように、そして光が入る綺麗な山を作っていけたらなぁと思っています。」
趣味のアウトドアがきっかけで林業が仕事になった川崎さん。山にいることが日常になり、今となっては「休みの日は、断然家がいい」と笑います。
山で仕事ができること、仲間と共に作業をすることがとても幸せそうでした。