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木も人も、大きくなるのは何年もかかる

木も人も、大きくなるのは何年もかかる

深く美しい山々に囲まれた日高町美山地区。急峻な山々は、「ヤッホーポイント」という名所もあるほど「やまびこ」がきれいに響き渡ります。
そんな美山で、植栽前の「地拵え」という作業を行う紀中森林組合の北亦宣彦さんにお話を伺いました。28歳のときに林業に就き、今年で10年目とのことです。

筋肉量も増え、以前より健康的に

元々居酒屋さんで働いていていたという北亦さん。飲食業とは異なる林業という働き方について伺いました。
「朝起きて外に出て、外でずっと仕事をするのは、当時と比べたら健康的で体のコンディションが全然違います。今でも3日4日休むと、体がしんどなってくるんですよ、体が重くなって。やっぱり仕事した日の方が一日健康的に動けるなっていう気がしています。年いってから、多分差は出てくるんかなと思いますね。飲食をやってたときと比べて、体の筋肉の量は全然変わってると思います」

なにも知らず一から始めた林業

愛知県出身の北亦さん。和歌山県で林業に就いた経緯について伺いました。
「父親の実家がこちらで、子どものころはよく遊びに来ていました。祖母が一人で暮らしていたため、誰かいた方がいいということでこちらに来ました。ちょうど失業したころだったのですが、親戚の集まりで「仕事探したるわ」と言われたのがきっかけです。そのときに初めて林業を意識したので、なにも知らずに一から始めましたね」
最初は半年間、シイタケ栽培のアルバイトから始めたそうです。正式に作業員として採用され、現在は保育の班で地拵え、獣害対策のネット張り、植栽、除伐、間伐など森の手入れをされています。
「手持ちは何もいらない。最初は細かい道具とかは必要ですけど、補助金でチェーンソーをもらえたりとか、手厚い歓迎を受けるんじゃないでしょうかね。僕が研修に参加したときは、資格を取らせてくれ、給料も出ました。研修をしたからできるようになるというわけではないのですが、他の業界ではあまりないありがたい部分ではありました。真面目に取り組みさえすれば、働ける環境は自然と整ってくると思います。
ただ、仕事的にはかなり人を選ぶと思います。自然相手の仕事で、漠然とのんびりとしたイメージを持ってくる人が多いのですが、全く正反対なんです。結構密なチームプレーが重要になってくるので、まったり一人でできるという理想とはちょっと違うかな。
体力的に結構しんどい部分もあります。夏は暑いし冬は寒い。あと、苗を植えてどうなっていくかって結構長い時間、十年単位ぐらいの時間がかかってきます。そういう部分でやりがいとかは見えにくいなというのは最初思いましたね。枯れるのはすぐ枯れるけれど、大きくなるのは何年もかかるので」

人が入ってきやすい環境づくりに関わっていきたい

北亦さんの現場では、30代が北亦さんを含めて3名。20代は0人です。人手不足が現在の林業の深刻な課題でもあります。
「これからどんどん人が少なくなっていくと思います。それを考えたらもっと早い段階で人を入れておかないと、切り替えができないです。それなりにできるようになろうと思ったら、3年~5年はかかります。
新しい人が入ってきやすいような環境作りに、ちょっとでも関わっていけたらなと思いますね。先日、和歌山県農林大学校のインターン説明会に初めて行かせてもらいました。そういった部分でも、できることをやっていきたいなと思っています」

木が大きくなるには、何年もかかる。そして、一人前に林業の仕事ができるようになるまでにも、何年もかかる。長い歳月を見据えながら、日々一本一本の木と真摯に向き合う北亦さん。10年間という経験を積んできているからこそ語られる、リアルなお話をお伺いすることができました。相談会や説明会などで北亦さんにお会いすることができたら、包み隠さず、いろいろなアドバイスをいただけそうです。