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大阪から和歌山へ通勤。50歳でかなえた林業への転身

大阪から和歌山へ通勤。50歳でかなえた林業への転身

和歌山県の北東部に位置するかつらぎ町。
北は和泉山脈、南は紀伊山地に囲まれた自然豊かな土地です。
大阪府と隣接するこの町へ、府内から日々出勤する北田信宏さん。
2025年4月にかつらぎ町森林組合へ入職して約9カ月。夏の酷暑を経て、今年初めての冬を迎えています。雪が残る森林の中、林業に従事するまでの経緯や、実際に働いてみて感じていることについてお話を伺いました。

50歳。節目となるタイミングで、林業の世界へ

前職は医療機関で働いていた北田さん。山やキャンプが好きで、ボランティアで山の作業をする活動に10年ほど参加していました。そうした経験を重ねるなかで、林業に対して興味や憧れを抱いていました。5年ほど前からガイダンスなどに参加するものの、なかなか踏み切れず、思い悩んできたそうです。

転機となったのは、50歳という節目の年。
「このタイミングで始めなければ、もう一生やらないのではないか」と思い、一歩を踏み出しました。

ご家族からは、危険な仕事というイメージもあり、最初は心配されていたそうです。それでも、「自分がやりたいことなら」と背中を押してくれました。そんなご家族の理解もあり、現在は大阪南部の自宅から車で1時間ほどかけて通勤しています。

休まずに現場に向かうのがやっとの日々。想像以上に厳しい林業の現場

体を動かすことが好きで、体力的にもやっていけるのではないかと思っていた北田さん。それでも、実際の林業の現場は想像以上に過酷なものでした。

「最初は朝起きるのもぎりぎりで、休まずに現場へ向かうのがやっとでしたね。チェーンソーや携行する道具がとても重くて、腰や手が痛くなったり、斜面を上るのもきつく、息が上がったりしていました」

森林ボランティアの活動を通して、チェーンソーの講習を受け、実際に使った経験もあったそうです。しかし、仕事として山で作業する現場は、想像以上に過酷なものでした。それでも徐々に体力がつき、作業にも慣れていきます。1カ月ほど経つ頃には、生活のリズムも整ってきたといいます。

「自分はあまり要領が良くないというか、習得にすごく時間がかかるなと思っています。それでも根気よく指導していただき、自分自身の向上を感じるときはすごく嬉しく感じます」
そんな前向きな姿勢で、日々の仕事に向き合っています。

ほっと一息ついたときの、自然との一体感

幼少期は、田舎に住んでいたという北田さん。
「遊び場は山の中で、基地を作ったりして遊んでいました。自然が身近にある状態が、自分にとっては自然な状態だったのかもしれません」
幼い頃から山に親しんできた記憶が、森の中での心地よさにつながっているのでしょう。

「チェーンソーの音も好きなんです。イヤーマフをして聞いていると、水の中にいるような感覚になり、自然との一体感を感じられます」そう穏やかに話してくださいました。

できるだけ早いうちに、一歩を踏み出してみては

「林業は、自然を相手にする仕事。そのかっこよさが魅力です」と話す北田さん。
これから林業を始めてみたいと考えている人へ、アドバイスをいただきました。

「私は長く憧れながらも、なかなか一歩を踏み出せませんでした。だからこそ、できるだけ早いうちに踏み出してみてはどうかなと思います。興味がある方は、ガイダンスや体験会にぜひ参加してみてください。とても手厚く迎えてもらえると思います。」

50歳で新たな世界に飛び込んだからこそ、その言葉には深い重みが感じられます。

「私はまだ林業のことを十分に知っているわけではないので、これからできることを一つずつ増やしていきたいです。もし後輩ができたら、自分が要領よく習得できずに悩んだ経験も含めて、伝えていけたらいいなと思っています」
そう前を向く姿勢も印象的でした。

「林業が本当に好きで、毎日が楽しいです」
物静かな口調で語るその言葉から伝わる、仕事への深い愛情と充実。
北田さんの刻むチェーンソーの音が、かつらぎ町の深い森林に今日も響いています。