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仕事と趣味を両立させられる。林業は「自由がある」仕事

仕事と趣味を両立させられる。林業は「自由がある」仕事

木をふんだんに使った事務所は、働く人を心地よく包んでいるように感じました。

南紀森林組合は、和歌山県の最南端の串本町、古座町、古座川町にまたがる地域の林業振興を担っています。
勝山 高嘉(かつやま たかよし)さんは、組合長になって12年。山と川と海がすぐそばにあり、自然とのつながりを日常的に感じる故郷で、勝山さんの林業に対する思いをお聞きしました。

南紀森林組合に受け継がれていく林業

国鉄で機関士として働いていた勝山さんは、お父様が亡くなられたのをきっかけにUターン。勝山家が、林業、農業、漁業に携わり、南紀森林組合の組合員であったことから理事を経て組合長になりました。

同組合の管轄地には、植林してから50〜60年が経ち、収穫の時期を迎えた木が多くあります。木を伐り、新しい苗を植え、また木を育てることを主体に、林業全般の仕事に取り組んでいます。

現在の主な作業は、森林に木を運ぶ道を造成する「林産班」と、木の間伐や伐採、下草刈りなどをする「森林整備班」の2班構成。県外からの移住者と共に、実家が林業をしていたり、幼い時から林業に関わっていたりする地元の方が、和歌山県農林大学校を卒業するなどして就職しています。

「今は、山の中にトラックが通れる道を作り、伐採した木を運び出す形でやっていますが、そのうち架線を張って木を運び出すなど、昔からやっている林業の原点に戻ってくると思います」

和歌山県の山は、他の都道府県に比べ急斜面が多いと言われています。運搬道を作ることができない山では、昔ながらの技術が必要になることも。林業は、機械化やDX化が進む現在でも、昔から受け継がれてきた技術が必要とされる産業です。

暮らしを守ることに直結する山の循環

南紀森林組合で伐り出した木材のほとんどは、合板会社に送られ、ベニア板に加工されます。取引先は京都府舞鶴市にあり、トレーラーで週4回、月500㎥ほどを出荷しているそうです。
「約3ヶ月に1回、価格交渉をします。梁桁などの建材として出荷するより収入としては安定します」

成熟期を迎えた木を収穫し、また苗を植えて木を育てるという循環が、山の活力になり、治水を支え、海の魚の栄養にもつながっています。林業、農業、漁業を生業として暮らしてきたこの地域の人々は、森林を守ることが、ここでの暮らしを維持することにつながると深いところで理解しています。

材価の低迷が続く中でも、山を循環させる。
暮らしを守るための取り組みが粛々と続けられています。

林業が抱える課題と広がる可能性

「どこも同じだと思いますが、材価の低迷に加え、人材確保が一番の課題」だと勝山さんは言います。
「林業は大変なイメージがありますよね。危険な仕事ですし、夏場の作業は過酷です。昔は、人が辞めてもすぐに次の人が見つかりましたが、この頃は本当に難しくなりました。人それぞれの道もありますし」

独立心が強い人ほど辞めていく傾向があるそうです。事業を起こして林業を始めたり、組合と提携して外注先になったりと、林業でのつながりはありつつも「組合に人がいないと何もできない」と人手不足は大きなネックのようです。

「ただ、昔のような職人気質の職場ではなく、会社勤めの感覚で働ける環境」だとも話してくれました。
「今の林業は、勤務時間も決まっていてサラリーマンと同じような働き方になっています。時間的にゆとりがあるので、仕事と趣味を両立させたい人には働きやすいと思います」
一般的なサラリーマンと違う点があるとすれば、危険を伴う仕事だということ。それ以外は、福利厚生、年次有給休暇制度も整っています。

南紀森林組合で働いている方の中には、田舎暮らしを希望して移住し、田舎での仕事として林業という未知の世界に飛び込んだ方もいます。晴れた日は山で作業をし、雨の日は機械のメンテナンスをする。山、川、海を満喫し、趣味の釣りを堪能する。林業に関わるうちに面白さを見出し、今では紀州林業の技術を次世代に伝える指導者として活躍しています。
「趣味と仕事を両立させられる暮らし。その『自由がある』のが大きい」と勝山さん。

一方、山での鹿による獣害にも頭を悩ませているそうです。苗木を植えても、一番柔らかな成長点を好んで食べられ、囲いとなるネットを張っても被害は止まらないのだそう。

材価の低迷、人材不足、獣害・・・。
課題は次から次にやってきますが、山の循環を軸にしながら、人や地域を支える林業に地道に取り組んでいる様子が伝わってきました。

静かに、確かに、受け継いでいく仕事

言葉少なく語る勝山さんから、時代の変化を受け止め、人それぞれの意思を尊重し、抗いながらも流れにのって守るべきものを守っていくことの大切さを教えてもらえた気がします。

勝山さんにとっての林業は、意識せずとも生活の一部であり、これからも受け継いでいきたい仕事。

山に囲まれ、海へと続く町。
南紀森林組合には、静かに、そして確かな時間が流れています。