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ライフスタイルに合わせて。ロード・トゥ・フォレストリー

ライフスタイルに合わせて。ロード・トゥ・フォレストリー

林業従事の行程、どのルートを選ぶ?

例えば山を登る時、一直線に斜面を登り頂上を目指すのと、巻き道で時間をかけて登るのでは、かかる時間と同時に、勾配による難易度も変わってきます。「遠回りするのが一番の近道」とは元メジャーリーガー・イチロー選手の数ある名言の1つですが、林業の場合はどうでしょうか。

林業への就労方法は大きく分けると2つ。森林組合や民間の林業関連会社に就職する方法、そして林業大学などで学ぶ方法があります。どちらがよいというのではなく、働きながら学ぶか、学んで働くかという順序の違いですが、山登りと同じように道のりの部分が変わります。巻き道を歩くように、1年かけて学ぶルートは、時間をかけて着実に知識や技術を習得することができます。ですが、一足飛びにまず頂上に行ってしまう方法だって体力がいるものの決して間違いではありません。例えば、家族がいる場合やすぐに稼がなければならない場合などに、即就労して働きながら学ぶこともできるからです。順番を変えることで、働きながら学ぶという負荷はかかりますが、それをサポートする施策は整っています。

例えば「緑の雇用」事業は未経験から森林の仕事に就いた人に対して、講習やOJT研修を行い資格取得をサポートし、キャリアアップを支援する制度。就業年数に応じて研修内容をステップアップさせ、フォレストワーカー(林業作業士)からフォレストリーダー(現場管理責任者)、そしてフォレストマネージャー(統括現場管理責任者)へとキャリアを積み重ねることができます。

しっかり学んで就労コースが可能な場合におすすめなのは、和歌山県農林大学校。

森林・林業経営学の基礎から将来林業経営を担える実践的な知識や技術を身につけることができるこちらの学校では、林業の担い手となる学びを得ると同時に、インターンシップなどを通じてじっくりと自分にあった就労先と自分を見据えることができます。即戦力として就労することが近道だとしたら、学校で学ぶことは遠回りとも言えます。ですが、農林大学校に通う1年間でさまざまな資格取得ができることを考えると、イチローの言葉も頷けます。

また裏技として、森林組合などでアルバイトしながら農林大学校に通うというワーク&スタディの道も。アルバイトであれば農林大学校に通いながら「緑の青年従業準備給付金」を受けることも可能。この場合は一体近道なのか遠回りなのか、判断に迷うところですが、林業を志す人にはさまざまな形で就労への門戸が開かれています。

どういった形で林業に関わっていくのか、踏み出せない場合はまずわかやま林業労働力確保支援センターに相談を。ここでは、希望する人に林業の無料職業紹介事業を行なっています。

平成10年に和歌山県知事から指定を受けて設立されたわかやま林業労働力確保支援センター。林業を仕事にしたい人と、林業事業体の間を取り持ちマッチングを促進することで、林業の発展と雇用の安定を目的とする、非営利の団体です。

「まだ林業に就職までは考えていないけれど、関心がある」といった軽い相談も歓迎だそう。その場合、事業体の見学や体験、研修などを行ったり、相談会を定期的に開催するなど、さまざまな方面から林業就労までの道をバックアップしてくれます。

紀州の山は強く美しい木材の宝庫

林業就労を山に例えたものの、決してその山はゴールではなく、むしろそこからが森に関わる長い道のりのスタート地点。森林を守り育て、木材として切り出し利活用していくことが大前提にあります。

日本最大の半島である紀伊半島。その西側に位置する温暖多雨な気候のもと、県南部では特に木々が豊かに生い茂り、緑深い山々が連なっています。今も県土の約77%をカバーする山林、そしてその8割が紀南地域に集中しています。

一般的に「紀州材」と呼ばれるのは、この紀伊半島南部、旧紀州藩領で育林された木材を表します。その紀州材のいわれを辿ると、神話の時代にまで遡ります。日本書紀の古い記述に伊太祁曽神社の「木の国神話」があり、木の神である五十猛命(いたけるのみこと)が日本中にたくさんの樹木を植えて回ったとされています。これが「木の国=和歌山」と呼ばれる由縁。和歌山市にある伊太祁曽神社には、今も全国の林業関係者が参拝に訪れます。

その後、紀州材が木材としての知名度を上げたのは江戸時代になってから。紀州みかんで大きな財を得た紀伊国屋文左衛門が、木材商となり江戸に木材を運んで幕府御用達にまで上り詰めたことが始まりと言われています。このことから「紀州材」が江戸に広く流通し、紀州は質な木材を生み出す林業地として知られるように。江戸の大火で再建に貢献したのも紀州材と言われています。

木々を育む和歌山の気候・風土に加え、山を守り育てる人の技が作り上げた紀州材。強さとしなやかさを兼ね備えた美しい木材として、構造材や内装材など主に住宅用として今も重宝されています。

そんな風に森林とともに生きて来た土地だからこそ、山にはその自然を守り育ててきた先人たちの想いが息づいています。わたしたちはそんな先人たちからの意思をしっかりと受け継いで次の世代につなげていかなければなりません。

林業は未来への最先端のアプローチ

林業従事者には地元の人だけでなく都会からのIターン、Uターン者が多いのはご存知でしょうか。その理由は、自然とともに生きる田舎暮らしとの両立が無理なくできることにあります。林業は専門職でありながらも、知識や技術がゼロの状態から始めやすく、そのためのサポート体制も手厚く整っています。またフィールドが山の中ということが田舎暮らしをしたい移住希望者にとって苦ではないことも大きな理由。森林セラピーという言葉もあるように、都会の喧騒からかけ離れた山や森のゆったりとした時間に寄り添い、四季を感じながら生活することで、心がおだやかになっていきます。だからでしょうか、林業に関わる人たちは、仕事中こそ緊張感を持った真剣な眼差しですが、ひとたびオフの状態になるととてもやさしく穏やかな表情をしているように感じます。

豊かで安心・安全な暮らしを継続することを目標としているのが、現在国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)。このうちの17の目標、169のターゲットには、海の生態系や陸の生態系、生命の根源である水の保全、気候変動など、森林と関わりの深い項目がいくつもあります。森林は資源であると同時に水源かん養や林産物の供給、生態系の維持など、わたしたちの暮らしを守る多面的な機能を備え、木質バイオマスの熱や電気への有効活用なども含めると、さらに多岐にわたって人々の生活に関わってくるからです。2017年1月に国連森林フォーラム(UNFF)が採択した「国連森林戦略計画2017-2030」では、「森林の活動がSDGsの17目標のうち、じつに14の目標達成に寄与する」と示されました。

林業そのものに関わるのは、伐採地の森林環境や地域社会に配慮した木材・木材製品を指す「フェアウッド」の観点からなる「目標12:つくる責任つかう責任」。これらを視野に入れた長期的な森林整備計画は今後さらに必要不可欠になってくることでしょう。

いまある暮らしと自然を守り育てること、そして未来の生活や災害を見据え、長期的に林業に携わることは、より大きな観点から自然との共生を図る大きな役割を担います。森とともに生きることでできる、未来へのアプローチ。そんな可能性を秘めた林業から目が離せません。