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30年前から作り続けた森が新しい林業の形を生み出す-高野山寺領森林組合

30年前から作り続けた森が新しい林業の形を生み出す-高野山寺領森林組合

  • 必要な人材
  • 森林セラピー
  • 特別な地
  • 生活の中の林業
  • 豊かな森

歩いているうちに香りが変わっていく森林セラピー®

高野山寺領森林組合は、約1200年前に弘法大師空海が開いた高野山真言宗総本山金剛峯寺の山を管理する組合です。とはいえ、通常の林業と同じように木を伐採し、同じように出荷もされます。他の林業の現場と異なるのは、驚くほど太い幹の数百年クラスの木が大事に育てられていること。主にお寺の修復に使われます。

迫力のある木々が並ぶ金剛峯寺の森林で行われているのが「森林セラピー®」。林業が落ち着く春から秋にかけて、不定期で開催しています。

凛とした空気に包まれた森林に入っていきます。ガイドしてくれる西田さんの後について、話を聞きながらゆっくりと進んでいきます。木々の香りが立ち込めます。木がこんなに香るものかと驚きました。森林の香りというと杉や檜の香りを想像しますが、ここにある香りはもっと甘い、嗅いだことのない香りでした。

木々や湿地を見ながら、さらに奥に進んでいくと、また香りが変わります。思いっきり吸い込みたくなるような心地よい香りです。思わず深呼吸します。

凛とした空気に包まれた森林の中で、心地よい香りに包まれて深呼吸することは、想像以上に頭も体も、そして心もすっきりとする体験でした。

30年前「かっこわり」と言われた森を作り続けた

様々な木々が立ち並んでいることに気づきます。他の林業の現場とは違い、紅葉樹の姿も数多く見られます。他の林業の現場と同じように、以前は杉や檜が植えられていました。しかし森を守らなければならないという思いから、当時金剛峯寺の山林部に勤めていた西田さんが周りの人たちを説得し、30年ほど前から様々な種類の木を植え始めたということです。

当時は、雑木が植えられていることは「かっこわり」と言われていたそうです。それでも自然に近い山を作っていきたいと、植え続けていきました。大好きな桂の木は5,000本も植えたそうです。

林業は「売る」段階があって初めて成立する

そんな西田さんの印象的な言葉は、「林業は売ってはじめて林業だ」という言葉です。西田さんは経済林の管理も行なっています。西田さんは山のことにとても詳しい。それは山を「仕事にできている」からなのだと感じました。自然を守るだけでなく、自然の循環の力を私たち人間が生きていくために使わせていただくことは、エコなシステムとして次世代に残していくべきだとも感じます。

西田さんは「厳しい林業に関わっているからこそ、森林の魅力を感じられる」と、経済林の管理が森林セラピーにも良い影響を与えてくれると言います。

自然観察など、様々なことができる人材を育成していきたい。

高野山という土地柄、興味を持って森林組合を訪れる方は多いそうです。しかしながら、偉大な自然と向き合うためには、「山が好き」というだけでは成り立ちません。人が手を取り合って進めていかなければならない林業は、人間関係もうまく進めていく必要があります。

自然が好き、山を守りたい、という思いだけでなく、仕事としてしっかりと進めていける人材を必要としているという。

健康経営の推進などで注目が高まってきている森林セラピー®。そして一度手を入れた山を守り続けるための経済的な活動。高野山という特別な地で行われる林業は、歴史に甘んじることなく、新しいチャレンジを続けています。