1. ホーム
  2. わかやま林業ノート
  3. 山と関わる新しい形を高野山から
山と関わる新しい形を高野山から

山と関わる新しい形を高野山から

  • アロマオイル
  • 森林セラピー
  • 高野六木制度
  • 高野山

大阪の派遣会社から和歌山県高野町の高野山寺領森林組合へ。
「事務的なこと色々やっています」という山本加奈(やまもとかな)さんの業務内容は本当に多種多様。山本さんが今の仕事に関わる経緯、そして、仕事を通して考える山のことを教えてもらいました。

入り口は森林セラピーの資格取得

山本さんが高野山寺領森林組合に勤務するようになって11年。前職は、大阪の派遣会社でコーディネーターの仕事をしていたそうです。登録される方に、ヒアリングをしたり仕事の紹介をしたりが主な仕事。

「当時勤めていた派遣会社が、残業よりも副業を推奨する雰囲気になってきたので、資格を取ることを考えました。元々アウトドアが好きだったし、自然と関われるフィールドで何かできたらいいなと辿り着いたのが森林セラピーの資格でした。」

森林セラピーとは、森林の中に身をおき、自然の空気や景色に触れたりレクリエーションをしたりすることで、心身共に癒しを得ること。山本さんは、ガイドとしての資格を取得しました。

「近畿圏内どこで森林セラピーの資格を生かせられるか調べたところ、和歌山県の高野町と出会いました。和歌山市出身なので、県内でできるのもいいな〜って感じでした。」

派遣会社で働きつつ森林セラピーガイドとしても活動していたところ、高野山寺領森林組合が事務職員を募集しているのを知ったそう。生活の拠点を移して、セラピーガイドも本格的にやっていきたいと高野町にやってきました。

「高野山だからこそ」を生かして

高野山寺領森林組合の事務職員となった山本さんの業務は、経理などの事務一般の仕事から、森林セラピー企画・運営、和歌山県の緑育推進事業の一貫で行う林業教室の段取り、さらには山に入っての植栽、夏場には高野山森林公園内の草刈りと多岐に渡ります。

山本さんは日々の業務だけでなく、高野山だからこそできることに着目しているようです。
「森林セラピーはリピーターのお客さんが多いんです。高野山は約1200年前に弘法大師空海が開いた真言密教の聖地。宗教的な癒しと自然の中でリラックスできる癒しのダブル効果というかね、高野山というネームバリューはとても大きいと思っています。また、高野山にはかつて高野六木(こうやりくぼく)制度というのがありました。スギ、ヒノキ、モミ、ツガ、アカマツ、コウヤマキの6種類を、高野山のお寺の建築や修繕以外では切ってはいけないという制度です。この制度によって高野山の自然が守られてきたことも伝えていきたいので、六木をからめた製品作りやワークショップにも取り組んでいます。」

台風などで倒れた木、成長過程で切り落とす必要がある枝、木の葉など、副産物を利用できないかと試行錯誤。木工製品はもちろんのこと、2〜3年前からアロマオイルやハンドクリームの製品化も行われています。

「高野山には宗教的な歴史だけではなく、環境的にも希少な動植物が生息しています。それらの魅力を伝えられるように森林セラピーでもご案内しているつもりです。

非日常の体験を得られた感動。それを持ち帰って日常の生活に何らかの変化がもたらされたということになれば本当に嬉しいです。この山が持っているポテンシャルを、いろんな形で生かしていけたらなと思っています。」

もう、何屋さんかわかんないですね、と笑う山本さんがとても清々しく感じました。

山での作業だけが山に関わる仕事じゃない

前職での人と仕事をマッチングする経験は、今、人と山をつなげる仕事に生かされています。
「山仕事って、男性がしてるイメージが強いですけど、部分部分でやっぱり細やかなこともしなければならないから、女性もいろんな場面で活躍しています。山に関わる仕事は、木を切る、木を植えるだけではないですからね。付随する部分でなんらかの関わりができたら裾野が広がっていくし、いろんな可能性が見えてくると思うんです。
与えられた環境で自分には何ができるか、どこが長けてるかっていうのを見つけられたらいいんじゃないかなと思っています。」

山本さんにとっては、森林セラピーという入り口から始まった山の仕事。高野山の歴史や山の保全のこと、そして日々の暮らしに取り入れられる自然のことなど、山本さんの視野はどんどん広がっている気がします。
いつか山本さんの案内で高野山を歩いてみたいなと思いました。